TOUCH口腔機能回復センター http://touch-clinic.jp/ (舘村歯科クリニック内) 一般社団法人TOUCH http://www.touch-sss.net/

口腔機能の歯医者-DocTak舘村卓のささやきⅡ

摂食嚥下障害や音声言語障害に悩む方々のお役に立てる情報を提供します.

TOUCH Team for Oral Unlimited Care and Health
限界無き口腔ケアと健康のための医療福祉団
口腔機能の歯科医師 舘村卓は以下の代表を務めています
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小学5年生児の窒息事故の報道で思うこと(TOUCHウェビナー受付中です)

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高齢者施設で窒息事故の原因となったパン

昨日の報道-佐渡の小学生,給食のパンで窒息し,その後死亡となった事故

 

 新潟佐渡の小学5年生が給食の米紛パンをのどに詰めて意識不明となり,その後11日に死亡したニュースが昨日流されていました.米粉パンは10cm~12cmほどの大きさで、児童は一口で食べようとパンを口に入れていたとのことです.担任教諭は,救急車が到着するまで腹部を押さえたり掻き出そうとしていたそうです.

 児童死亡後に教育委員会は給食の食べ方を指導するように通達したとのことです.

 どのような食べ方の指導が行われたのか気になるところです.もちろん児童が米紛パンを一口で食べようと口に詰めたことが起点であることは確かですが,「食べ方」だけ変えれば安全だったのかという疑問がわきます.

 もしも鼻呼吸できていたら結果は違っていたでしょうか?口に頬張っても,軟口蓋に触れた際に嘔吐反射が生じていたらどうでしょうか?咀嚼運動時には鼻呼吸が担保されていることが必要です.

 鼻呼吸できない状態(例えば,風邪をひいているときなど)であると持続的に咀嚼できないために,咀嚼中に口呼吸する必要があります.この年齢ではアデノイドは退縮していると思われますが,中には十分に口蓋扁桃が退縮しておらず,まだ大きく咽頭を塞ぐようになっている児童もいるのではないでしょうか.もしも,その状態で口にパンを頬張ると,口呼吸も不可能になります.

 さらに,食事中に生じる刺激唾液のアミラーゼによってパンの表面は溶かされ,糊状となって口腔咽頭粘膜に張り付いてしまうでしょう.給食のパンはスポンジ状ですので,より唾液を吸収しやすくなっています.

 私の年代での給食では,発酵不十分な酸っぱさの残るパンに,極々少量のジャムやバターが付いてくることがありましたが,もしも十分量であれば凝集性は高くなり,付着性は低下したかもしれません.

これらのことを含めて指導がなされたと思いたいです.

  この事故は高齢者施設での窒息事故とよく似ています.したがって,口腔咽頭機能のレベル,食事物性ならびに一口量,食事摂取のための口腔生理学に注意が必要なことは,児童であれ高齢者であれ,共通しています.

 25日開催のTOUCHウェビナー(評価)では,このようなことを未然に防ぐための考え方を紹介いたします.詳細はhttp://www.touch-sss.net/まで.

 

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第61回ウェビナー終了しました

ウェビナー基礎A第61回終了しました.まだまだウェビナーですね.

ようやくワクチンの接種が始まり,なんとなくトンネルの出口が見えてきたような気持になります.そろそろphysicalなセミナーや実習セミナーを行いたいところですが,今しばらくの辛抱かと.

5月30日,6月6日にTOUCH摂食咀嚼嚥下基礎ウェビナーA終了しました.今回のご参加の皆様はおしとやかでchatが少なく,少々孤独感を感じてしまいました.もっと盛り上がるようにアンケート等を工夫しないといけないなぁと反省しております.

 

さて次回は,評価法の基礎Bウェビナーです.指示に従えない認知症のお爺ちゃんやお婆ちゃんに内視鏡可能でしょうか?改定水飲みテスト,フードテスト,反復唾液嚥下テストも指示に従えないと正しく評価できません.しかも,いずれの検査も感度や特異度については圧倒的な数値を持っていません.にもかかわらず,有名なサイトではスクリーニングに使えるとして堂々と薦めていますよね.

少々古いですが,2010年の全国老人保健施設協会の統計では,登録の3350施設の利用者298000人余りの85%が認知症です.これらの検査,大丈夫か?

 

この問題についての生理学的背景と,ならばどのように評価するかについて,7月4日と25日にウェビナーでお話しします.詳細は,一社TOUCHのHPまで

 

写真は猫額庭のヒメシャラです.今年は大きめの可憐な花が咲きました.

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額描庭 ヒメシャラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

棒付きキャンディーで口唇機能は賦活されるのでしょうか?

口唇機能の賦活訓練に必要な考えは?

 Covid-19のために,ほとんど「猫額庭」横の仕事場から出かけないことで,隠遁者のような内省的な生活になっています.オンラインの学会や会議,講義が増え,月に数度の定期的外出すると「あれ?」と思うことに遭遇します.久し振りに,このブログのタイトル通りに「ささやき」たいと思います.

 

  月に一度出かける大学での患者さん(子供さん)のお母さんから,「訪問してくださるSTさんが棒付きのキャンディーを唇に当てる訓練をしてくれています」と報告を頂きました.子供さんは,ある先天障害のために窒息や誤嚥のリスクが高いとして,経口摂取が禁じられて生後からNGチューブによって栄養されています.数年前に親御さんが口から食べられるようにしたいとしてお越しになり,現在にいたっています.

 歯の大きさは,乳歯では出生前の母親の栄養状態により決定され,永久歯では生後の児の栄養状態により決定されます.生後から非経口摂取で経過していれば,永久歯はほぼ平均的な大きさになります.

 一方,歯槽骨を含む骨は「しなる」ことで成長します.経口摂取していれば,咀嚼時の咬合力によって顎骨は「しなる」ことになり,顎骨は適切に発達して歯列が完成します.

 生後直後から非経口摂取で経過すると顎骨は劣成長となり,小さな歯槽骨に正常な大きさの永久歯が並ぼうとします(実際には正しく並びません).その結果,上顎の歯は外に向かって生えたような状態になります(この詳細は,拙著の摂食嚥下障害のキュアとケア第二版に記述しています).本児も同様の状態で,外側にflare-outした前歯によって上下の口唇の閉鎖が難しくなっています.

 モノの教科書には,口唇機能の訓練法として「棒付きのキャンディー」による方法が紹介されており,このSTさんも忠実に実行されているのだと思うのですが,小生は少々疑問を感じています.

 キャンディーを口唇に触れて口腔内に入れると口唇機能が向上する生理学的根拠は何でしょうか?どれほどの期間行えばよいのでしょうか,1回あたりの時間はどう設定すればよいのでしょうか,一日何回するのでしょうか,については明確なガイドラインはありません.重要なことは,「いつ,どうなれば,その訓練は止めることができるのか」の判断基準は何か,です.

 

 巷間,多くの立派な学会も含めて,あまたの訓練方法があふれています.某国営放送局の番組などでもそれらしきものが放送されていたりします.

 それらが適用できるためには,なぞそうなったかの原因解明と生理学的な機能評価が必要です.その上で,適切な負荷量,回数,1回あたりの継続時間が決められる必要があります.上記の子供さんへの口唇機能の賦活方法については,どう考えれば良いのでしょうか?

詳しくは,現在募集中の(一社)TOUCHウェビナー基礎Aでお話しします.

 

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第60回口蓋帆咽頭閉鎖機能セミナー終了しました

第60回 TOUCH口蓋帆咽頭閉鎖機能セミナー 終了しました.

 

4月4日と18日,TOUCH口蓋帆咽頭閉鎖機能セミナーを終了しました.かなりのマニアックなセミナーですが,speechの機能と嚥下機能の要衝である口蓋帆咽頭閉鎖機能(一般には鼻咽腔閉鎖機能と言っていますが...)について,解剖,生理,検査,治療まで4時間にわたってウェビナーしました.もっと詳細な情報を提供したいところなのですが,4時間がギリギリ我慢できる限界かと思っています.

教育に当たっておられる現役の教官の方々にもご参加いただき,嬉しい限りでした.

大阪ではCovid-19の感染者数がとどまらず,知事は近々に緊急事態宣言の発出を要請されるようです.基本的にあらゆる「人流」(こんな言葉があることを寡聞にして知りませんでした)を停めることになるようです.

ウェビナーであれば感染の心配は不要ですので,当面はこの形式でシリーズウェビナーを続けていこうと思っています.

今年度(2021年度)の新たなシリーズウェビナーは,摂食咀嚼嚥下基礎Aウェビナーから開始です.現在の予定では,5月30日,6月6日の開催を予定しています.

近日中にTOUCHのHPに情報をUPいたします.

 

季節はすっかり初夏の様子となっております.我が「猫額庭」の木々も緑一色になってしまいました.

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4月の猫額庭 緑だらけ

 

 

 

ウェビナーアドバンスト 終了しました.

第59回世界でここにしかない口蓋帆咽頭閉鎖機能ウェビナー参加申し込みを開始しました.

2月23日,28日に開催しました第58回TOUCHウェビナー(事例検討)を終えることができました.最近,ウェビナーをしていて思うことは,日によってChatの利用の程度が異なることです.ウェビナーでは,virtualな対面,双方向講義のような使い方ができるため,私個人としては,学会や会議だけでなく今後もっと広く使われるのではないかと思っています.

 

さて,なかなかCovid-19の収束が見えませんが,ワクチン接種が始まったことで(本当に始まっているの?というくらい,私の周りでは聞きませんが...),少し長く暗いトンネルの出口が小さく小さく見えてきたような気もします.

 

今回のCovid-19の蔓延やそれへの対応を見ていると,私たち日本人は「反省しない」人種だなぁとつくづく思いました.「起こってほしくないことは起こらない」ので,準備する必要はないとしてきたのではないでしょうか?かつて起こってほしくないことは起こってきました.神戸の震災,三陸沖の震災,どうでしょうか?国の中枢全てを東京に置いていていいのでしょうか?いずれ必ず襲ってくる震災が予測されているのに....

選択と集中」という言葉で,「流行りでない」「古そう」なことには,研究費や事業費も削ることで損益分岐点を下げて効率よく儲けようという考え方が蔓延っています.再生医療でiPS細胞だけに研究費を集中しているために,再生医療全体としては日本は後れを取っています.感染症に対応するために,いつ使うか判らないワクチンに資本投下するのは愚の骨頂としてきたつけが出ているように思います.この数年でノーベル賞をお取りになられた先生方の研究の中には流行りでない領域からのものもあるように思います.選択するのは誰?これらの研究は官僚によって選択されなかったものではないのかな?

 

さて,次回は4月4日,18日に「口蓋帆咽頭閉鎖機能」ウェビナーを開催します.世界でここにしかないウェビナーです.解剖,生理,臨床についてお話します.

言葉の訓練で吹き戻しを使うのは正しいですか?1回吹くと戻りが悪くなりますが...コップに入れた水をストローで吹くことは効果がありますか?ストローの太さは?水の深さは?判らないことなのに,平気で現場で使っています.

大丈夫でしょうか?

お申込みは(一社)TOUCHのHPまで(http://www.touch-sss.net/

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額描庭 白梅

写真は拙宅の「猫額庭」の上の段に咲いた白梅です.下の段の「紅梅」はまだのようです.

 

 

 

新年おめでとうございます.ウェビナー基礎B(評価)が終了しました.

ウェビナー基礎B(評価)が終了しました.

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門松


12月20日,1月10日に摂食咀嚼嚥下障害に対応する上で必要な評価についてウェビナーを開催しました.VF,VE,改訂水飲みテスト,反復唾液嚥下テスト,フードテストの危うさや使用時の問題について解説し,病院だけでなく,長期療法施設,老健等の回復期施設やリハビリテ-ション施設,居宅等の実際の現場で有効な評価法について解説しました.

年末の多忙な12月20日,新年最初の3連休の中日にもかかわらず,多くの方のご参加をいただきました.有り難うございました.

開催時の動画を編集してYouTubeに限定公開いたします.ご参加くださった皆様にはURLをご案内いたします.1週間ほどの公開ですのでご注意ください.

 

Covid-19の収束が見えず,一部の地域には緊急事態宣言が出されているようですが,この国の為政者さんたちの言動や行動は,まさに決められない方々の典型のように思えます.前経済同友会幹事の小林喜光氏は,「日本は黒船が来ないと動かない」と言われていましたが,黒船が来ても動かないことを露呈してしまいました.1991年に戸部良一/寺本義也/鎌田伸一/杉之尾孝生/村井友秀/野中郁次郎各氏の共著での名著「失敗の本質-日本軍の組織論的研究」(中公文庫)が出版されましたが(今でも入手できます),日本の組織-軍隊だけでなく-がなぜ変化に対応できないのかについて秀逸な分析を行っています.30年前の著ですが,全く色褪せぬ名著であり,この分析は今回のCovid-19への我が国の対応を見ると過去から全く学ばない国であることは変わっていないことや権威者と称される方が決めたことに問題があっても改変しない組織であることを改めて痛感しています.

学会の重鎮やレジェンドと称される方が決めた検査法が生理学的に問題を有していても改変されず,さらには保険請求の条件にまでされていることでどれほどの方々が迷惑を被っているか?に考えが及ばないのは,軍隊だけでない日本にある多様な組織-大学,企業,等々-全体の特徴かも知れません.

 

「起こってほしくないことは起こらない」と思いたい日本の傾向ではとんでもない結果が待っているのでしょうね.「兵士二流,下士官一流,上官三流」は日本軍についての当時の国際的な常識であったそうです・・・・イノベーションと言われていますが,ほとんど現在の日本ではイノベーションが起こらない理由にも通じますね.

 

2021年始まりました.どんな1年が待っているのか,どんな1年にするのか,Stay homeで考えたいとおもいます.今年もよろしくお願い申し上げます.

 

Covid-19とともに過ぎた2020年も終わります

楽器演奏者でのStress-VPIのPLP治療

 Covid-19で大きく変容した2020年も残り少なくなりました.

 昨年までは出かけていた仕事,毎月の熊本ハロー歯科や他の施設でのOJT,京都光華女子大学奈良県立医科大学での講義,学会の各種委員会もオンラインとなりました.対面することでの仕事ではbrain stormingの効果があるので個人的には好みなのですが,この状況は今後も変わらないような気もしています.

 

 (一社)TOUCHの活動の一つである年4回のセミナーもphysicalでは実施できず,ウェビナーでの実施となりました.主催者,受講者双方にとってメリット,デメリットがあるようですが,今後も継続することで生じた問題点を解決していくことができると思っています.

 

 TOUCHクリニックは,音声言語障害と摂食嚥下障害に対するリハビリテ-ションを目的として一昨年に開設しましたが,リハビリテ-ションに必要な場合には口腔装置治療を行うことにしていました.今年に入り,Covid-19が猛威を振るうようになってから,管楽器演奏者の中に吹奏時に呼気が鼻抜けすることで演奏ができなくなる,あるいは洩れるかもと思うと演奏中に不安になると訴える方々からの問い合わせが一気に増えました.いわゆるStress-VPIの症状です.健常者では,blowing時に口腔内圧と口蓋帆挙筋活動が相関し,最大筋活動は可及的最大努力でのblowingで示されます.さらに,最大筋活動の70%以上の筋活動になると筋疲労が生じることが知られています.

 このことから,演奏時には口蓋帆挙筋が疲労し,軟口蓋が口腔と鼻腔を分離できなくなることでStress-VPIが生じていると思われます.PLP(Palatal Lift Prosthesis軟口蓋挙上装置)を装着することで口蓋帆挙筋の疲労が軽減できることを明らかにしていますので,Stress-VPIのPLPによる治療には合理性があります.

 Covid-19で出かけることができなくなったことで装置製作にかける時間がもて,多くの演奏者に装着していただいてお役に立てたことは,なんだか奇妙な嬉しさでもあります.製作に当たっては演奏者のご意見や印象をお聞きすることで,新たな学びもありました.

 もう今年も8時間余りとなりました.今年はYouTubeも中断したままで終わることになり,宿題を残したままのような気分でもありますが,閉じ籠りで違う時間の使い方ができるようになりました.来る年も新たな問題が現れてくるのだろうと思いますが,上手くmanagementできるようにしたいと思います.

 

来年も「忘れた頃に更新ブログ」をよろしくお願い申し上げます.

来る年が皆様にとって幸せな一年になりますことを祈念して2020年最後のブログを締めます.一年,有り難うございました.

 

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2020年大晦日