昨日の報道-佐渡の小学生,給食のパンで窒息し,その後死亡となった事故
新潟佐渡の小学5年生が給食の米紛パンをのどに詰めて意識不明となり,その後11日に死亡したニュースが昨日流されていました.米粉パンは10cm~12cmほどの大きさで、児童は一口で食べようとパンを口に入れていたとのことです.担任教諭は,救急車が到着するまで腹部を押さえたり掻き出そうとしていたそうです.
児童死亡後に教育委員会は給食の食べ方を指導するように通達したとのことです.
どのような食べ方の指導が行われたのか気になるところです.もちろん児童が米紛パンを一口で食べようと口に詰めたことが起点であることは確かですが,「食べ方」だけ変えれば安全だったのかという疑問がわきます.
もしも鼻呼吸できていたら結果は違っていたでしょうか?口に頬張っても,軟口蓋に触れた際に嘔吐反射が生じていたらどうでしょうか?咀嚼運動時には鼻呼吸が担保されていることが必要です.
鼻呼吸できない状態(例えば,風邪をひいているときなど)であると持続的に咀嚼できないために,咀嚼中に口呼吸する必要があります.この年齢ではアデノイドは退縮していると思われますが,中には十分に口蓋扁桃が退縮しておらず,まだ大きく咽頭を塞ぐようになっている児童もいるのではないでしょうか.もしも,その状態で口にパンを頬張ると,口呼吸も不可能になります.
さらに,食事中に生じる刺激唾液のアミラーゼによってパンの表面は溶かされ,糊状となって口腔咽頭粘膜に張り付いてしまうでしょう.給食のパンはスポンジ状ですので,より唾液を吸収しやすくなっています.
私の年代での給食では,発酵不十分な酸っぱさの残るパンに,極々少量のジャムやバターが付いてくることがありましたが,もしも十分量であれば凝集性は高くなり,付着性は低下したかもしれません.
これらのことを含めて指導がなされたと思いたいです.
この事故は高齢者施設での窒息事故とよく似ています.したがって,口腔咽頭機能のレベル,食事物性ならびに一口量,食事摂取のための口腔生理学に注意が必要なことは,児童であれ高齢者であれ,共通しています.
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