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口腔機能の歯医者-DocTak舘村卓のささやきⅡ

摂食嚥下障害や音声言語障害に悩む方々のお役に立てる情報を提供します.

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限界無き口腔ケアと健康のための医療福祉団
口腔機能の歯科医師 舘村卓は以下の代表を務めています
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棒付きキャンディーで口唇機能は賦活されるのでしょうか?

口唇機能の賦活訓練に必要な考えは?

 Covid-19のために,ほとんど「猫額庭」横の仕事場から出かけないことで,隠遁者のような内省的な生活になっています.オンラインの学会や会議,講義が増え,月に数度の定期的外出すると「あれ?」と思うことに遭遇します.久し振りに,このブログのタイトル通りに「ささやき」たいと思います.

 

  月に一度出かける大学での患者さん(子供さん)のお母さんから,「訪問してくださるSTさんが棒付きのキャンディーを唇に当てる訓練をしてくれています」と報告を頂きました.子供さんは,ある先天障害のために窒息や誤嚥のリスクが高いとして,経口摂取が禁じられて生後からNGチューブによって栄養されています.数年前に親御さんが口から食べられるようにしたいとしてお越しになり,現在にいたっています.

 歯の大きさは,乳歯では出生前の母親の栄養状態により決定され,永久歯では生後の児の栄養状態により決定されます.生後から非経口摂取で経過していれば,永久歯はほぼ平均的な大きさになります.

 一方,歯槽骨を含む骨は「しなる」ことで成長します.経口摂取していれば,咀嚼時の咬合力によって顎骨は「しなる」ことになり,顎骨は適切に発達して歯列が完成します.

 生後直後から非経口摂取で経過すると顎骨は劣成長となり,小さな歯槽骨に正常な大きさの永久歯が並ぼうとします(実際には正しく並びません).その結果,上顎の歯は外に向かって生えたような状態になります(この詳細は,拙著の摂食嚥下障害のキュアとケア第二版に記述しています).本児も同様の状態で,外側にflare-outした前歯によって上下の口唇の閉鎖が難しくなっています.

 モノの教科書には,口唇機能の訓練法として「棒付きのキャンディー」による方法が紹介されており,このSTさんも忠実に実行されているのだと思うのですが,小生は少々疑問を感じています.

 キャンディーを口唇に触れて口腔内に入れると口唇機能が向上する生理学的根拠は何でしょうか?どれほどの期間行えばよいのでしょうか,1回あたりの時間はどう設定すればよいのでしょうか,一日何回するのでしょうか,については明確なガイドラインはありません.重要なことは,「いつ,どうなれば,その訓練は止めることができるのか」の判断基準は何か,です.

 

 巷間,多くの立派な学会も含めて,あまたの訓練方法があふれています.某国営放送局の番組などでもそれらしきものが放送されていたりします.

 それらが適用できるためには,なぞそうなったかの原因解明と生理学的な機能評価が必要です.その上で,適切な負荷量,回数,1回あたりの継続時間が決められる必要があります.上記の子供さんへの口唇機能の賦活方法については,どう考えれば良いのでしょうか?

詳しくは,現在募集中の(一社)TOUCHウェビナー基礎Aでお話しします.

 

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