はびこる不可思議リハビリテ-ション-ガーゼに包んだ食べものは食べ物か?
毎月2度,大阪府歯科医師会CPセンターで摂食嚥下障害の診察をしています.
ある男児が半年に一度通院してきてくれます.約3年前の初診時には原始反射が強く,首もすわっていませんでした.固形物が摂取できる条件は,年齢や疾患にかかわらず,「首がすわる(うなずき頭位が採れる)」と「原始反射が見えなくなっている」の2条件です.
もともと(現在も)ある有名で立派な小児専門病院に通われているのですが,その病院のST先生から「原始反射があるので訓練はできない」と言われていました.不思議なのは「原始反射の脱感作も訓練」なのに,なぜか介入がなかったため,当方で脱感作のためのプログラムを提供し,約1年を要しましたが脱感作でき,スプーンや歯ブラシが挿入できるようになりました.
脱感作できたので(その病院には当方に通院されていることは伏せられていますので勝手に脱感作したと思われているようです),その病院で訓練が始まり(実際には当方で開始していました)ました.
ST先生からは,咀嚼訓練と称して「誤嚥すると危険だからガーゼに包んだ飴玉や味が出るもの」を臼歯部に置けとの指示でした.これは,「訓練」と称する,全く意味のない指導と言わざるを得ません.
臼歯咬合面に「何か物」を置けば,咀嚼運動が自動的に開始されるでしょうか?咀嚼運動の最低条件は「舌が前後上下左右に動くこと」であり,「これは食事である」ことが認識されなくては,一連の摂食咀嚼運動は始まりません.
ガーゼに包んだ食物を食べられたことがあるでしょうか?その食物?を咀嚼されたでしょうか?舌運動が前後方向に制限されていても咀嚼運動が勝手に生じるでしょうか?
不思議なことを臨床の現場で経験することがあります.それは「自分は絶対にしないけれど患者はできる」「自分は絶対にしたくないけれど患者にはさせる」ことです.自分のできないこと,試したことがないことをどうして患者さんに強いるのでしょうか?
しばらく,ブログを更新していませんでしたが,どうしても腹立たしいことに直面する機会が何度もあったので,ここしばらく「なぜ,あなたは患者に強いるのか?」をシリーズでします.例えば,「口蓋帆咽頭(いわゆる鼻咽腔)閉鎖機能の賦活には軟口蓋を綿棒で刺激する?」「食物は臼歯に乗せるだけで勝手に味が出る?」「嚥下時に頭部が前屈するのでバギーで後傾姿勢にする」などです.
私のコメントに異論のおありの方は是非生理学的立場からご指摘ください.待っております.次回のウェビナー基礎Aでもとりあげたいと思います.