舌小帯の早期手術は正しいか?
お約束の舌小帯と母乳保育についての私見の1回目,まず一般論から入ります.
「母乳を飲まない」(正確には「breast feeding」ではうまく飲めないということだろうと思います)場合に,舌小帯のせいにしてはいけません.
まず,一般論からみてダメな理由を書きます.
「生後直後の乳児の舌小帯は,舌尖(舌前方)に付いているので,もともと短い」ということです.
母親の胎内にいる間の児は,口腔に流れ込む羊水を嚥下していますが,児が随意的に舌運動を行って嚥下しているのではありません.したがって,舌筋の発達は不十分であり,当然のこととして舌の体積は小さく「ペラペラ」です.その結果,乳児の舌小帯は舌尖近傍に付着していることで,短くなっています.その後に段階的に離乳食を摂取するようになって徐々に舌のvolumeは大きくなり,相対的に舌小帯の付着部位は,舌尖から後方に移動してきます.すなわち,乳児での舌小帯短縮症の正確な診断は難しいということです.
次回は,「では言葉の面からはどうなのか?」を書いてみます.
今日は,号外があります.それは,「Stress-VPIの学生さんと甲子園」です.
先月,TOUCH口腔機能回復センターに,ブラスバンドでB♭サキソフォーンを吹いていると「鼻に抜ける」患者さんが来られました.15歳の学生さんです.サキソフォーンを吹き始めた小学生の時から鼻抜けがあったとのことです.
学生さんは吹奏楽が続けたくて現在の高校に進学し,ブラスバンドに入っています.
初診時に聴覚評価と内視鏡検査の結果,典型的なStress-VPIであったため,吹奏楽器患者さん用のPLPを作成しました.稀なことですが,慣熟期間も短期間で済み,完成までには都合3回要しただけでした.
PLPを脳血管障害の患者さんに作成した場合,慣熟期間が,1月程度以上要することが多いのですが,強いmotivationのせいでしょうか(根拠はありません.申し訳ありません)
学生さんの高校は,同県の「甲子園」代表で,連日の練習はほんとにハードな様子でした.当然,応援団として猛暑の中での演奏時に,PLPは奏効し,鼻抜けは生じることなく,彼女の望みである1回戦を突破しました.バンザーイ!
まことに嬉しい限りです.